寒夜採暖


 寒いから。
 行動の理由はたぶんそんなところなのだろう。
「近藤さん」
 声を掛けるとびくっと揺れて固まったのが、暗闇の中でもわかった。続いて決まり悪そうに笑う様子も。
「起こしちまったか?」
「…起きるだろそりゃ」
 お互い、声は低い。時間帯を慮って。最も、近藤がここへ来るまでにかなりの騒音を醸し出していたので今更ではあるけれども。
 夜中に忍んできた(つもりらしい)相手に、何の用事かと聞く必要はなかった。抱えた枕が全てを語っている。
 目が覚めて厠へでも行ったのだろう。そして戻ってみたら布団が冷えて寒かった。手っ取り早く温まるには元から温かい場所へ行けばいい。そんなところ。
 言ってやったら、少し拗ねたように顔を背けた。
「違ェよ」
「じゃあ何だよ。夜這いでもかけにきたってのか?」
「あ、そうするわ」
「は?」
 聞き返す間もなく胸の上に伸し掛かられて呻き声を上げた。
「重い、近藤さんっ」
「のしー」
「のしーじゃねェよ! 降りろ!」
「スペシャルのしー」
「ちょ、苦し…っ」
「どうだ降参か? トシ」
「ああもうタップ、タップ、てか話変わってんぞ!」
 そういやそうだな、と身体を起こしながら近藤は言い、夜這いだったよな、と起こしきってから言った。
「違うだろ。寒いの何だのって話だろ」
「そうだった。話変えんなよトシ」
「……」
 何も言えずに土方は布団の端を持ち上げた。ぽん、と放り投げるように枕を置いて、嬉々として近藤は潜り込んできた。
「あー、あったけー」
「俺は寒いんだけど」
 しかも狭い。男二人に布団はひとつ、有り得ない狭さだ。横を向いてもはみ出ている。近藤も似たようなものなのだろう。現に布団の中はどんどん冷えてきていた。
「何か意味あんのコレ」
 自分の布団に戻れと暗に言ったつもりだった。もう当然のように近藤はそうとは受け取らなかった。  寒い布団の中で、太い腕が土方を引き寄せた。
「これでいーだろ」
 さも名案のように言って近藤が笑った。自分を囲む腕と胸が震えた。土方は収まり悪く抱きかかえられながら、今が夜で良かったと思った。赤くなる顔だけは。
「トシ、もうちょっと足」
「こうか?」
 触れた足先の冷たさにゾクリと肩を竦ませた。
「冷てェ…」
「うん、だからトシで暖をとろうと思ってな」
「おかしいんだよその発想」
「そーか?」
 近藤が首を捻るのでその話はそれでおしまいになった。まだまだ言いたい事がないでもないが、山ほどあるのだが、まあこの冷えた身体を温められるのならば。今夜くらい。
 その「くらい」がこれで何度目か何十度目かは覚えていないけれど。収まりの悪いこの体勢にも慣れてしまったけれど。
「トシー」
「何だよもう寝ろよ」
 こうして寝不足を覚悟するのも。
「お礼にお前ものしーしていいぞ」
「いやいらねーし」
「スペシャルでもいいぞ」
「だからいらねーって」
 アレ楽しいのにな、と近藤が言って、ぎゅっと土方を抱きしめた。また夜這いに来るからなと言うので、もう来るなと言った。また来ればいいと思った。
 触れている近藤の足は、もうすっかり温かかった。


『アマタブル』のヒサさんからいただきました。
あ、あうわわわわわ 近土が おふとんで ぎゅーって 足ぴとって!恥ずかしいこいつら!
もう何回目なのよあんた達、一生そうやってればいいわ!ああ恥ずかしい近土って
し、幸せすぎるんですけど…どうしよう嬉しくてじたばたしました。
ヒサさんありがとう!